【記事】「挑戦へのトリセツ」僕の中でアドベンチャーレースと政治はひとつに繋がっている - 齊藤健一郎 インタビュー

2020年から開催されたNISEKO ADVENTURE RACE。その発起人である齊藤健一郎が、同年東京都知事選挙に出馬し、まさに投票日当日にレースに出場。当時自分は部外者としてその様子をみていました。

その後撮影でNISEKO EXPEDITION運営と関わるようになり、ある種話題に事欠かない「さいとう健一郎」の世間のイメージとは少し違う、直接対面で接したときの「齊藤健一郎」の想いはあまり世間には知られていないのでは?と感じたこともあり、今回インタビューの機会をいただきました。

テーマは「挑戦へのトリセツ」。アドベンチャーレースに限らず、現在の彼の挑戦についてお話をお伺いしました。

〈 聞き手=まつもと(ゆるやま!)〉

18歳で「10年後社長になる!」と宣言した

今回は「挑戦へのトリセツ」をテーマに、齊藤健一郎の半生に迫ろう、ということでいろいろ聞かせていただければと思います。よろしくお願いします。

まずは簡単な経歴をいただいてもいいですか?

齊藤 健一郎

バツイチ子なしの41歳、齊藤健一郎です。よろしくお願いします! 現在は堀江貴文のアクティビティ担当マネージャーをやっています。

小学校から大学までずっと野球をやっていたスポーツ少年でしたが、大学の一回生の時に「人生には野球以外の可能性もあるのでは」と思い立って、野球を辞めました。

その後とある飲食店のオーナーに惚れ込んで働かせてもらったあと、26歳のときにその店を買い取って経営を始めることになりました。しばらくは個人事業主としてやっていたんですが、税理士さんに勧められたのをきっかけに28歳になる年に法人化して社長になりました。18歳のときに「10年後に社長になる!」と宣言していたので、ちょうどよいタイミングだったんです。

その飲食店は10年ほど経営して、カフェレストランをはじめマリンの事業をやったり、アパレルや雑貨を扱ったりしていました。

その事業の最中に堀江さんに出会ったんですが、堀江さんと交友を持つ中で運転手を探しているという話になったんです。「けんちゃん、誰か運転手でいい人紹介してもらえない?」って。でもちょうどそのころ、僕には政治家になりたいという次の夢があったんですね。

政治家を目指すにあたり、堀江さんの下にいるとすごく面白いんじゃないか?と思い「だったら自分が運転手をやります!」と手を挙げて、結果的に運転手兼マネージャーをやることになりました。

堀江さんのマネージャーと飲食店事業の社長を1年ほど並行してやったあと、M&Aでその事業を買いたいという先が見つかったので、そこからは堀江のマネージャー1本でやっています。齊藤健一郎はこんな経歴の持ち主です。

18歳の時には社長になりたいと?

齊藤

そう、18歳の時に10年後に社長になるんや!って決めていました。で、その時に38歳で上場、48歳で政治家になるとも決めていたんです。

でも商売を続けていく上で上場したいっていう欲求がなくなってしまって。なので38歳で上場はやめにして、10年繰り上げて政治家になることにしました。

1年ほど前、39歳の時に東京都知事選にNHKから国民を守る党として出させてもらいました。そして41歳になった今年、次の衆議院選挙にチャレンジするという挑戦に今まさに踊り出ているところです。

2020年はレース当日が投票日でした

「政治家」が子供たちの憧れの職業になってほしい

政治家になりたいと思った理由はなんですか?

齊藤

これからの時代、僕は「政治家」が子供たちの憧れの職業になってくれればいいなと思っています。そういう時代がきたときに憧れられる存在に自分自身がなっていたい!というのが、僕の政治家になりたいという欲求の一番のベースなんです。

僕が飲食店を経営を始めたとき、ちょうど大阪都構想の話で橋下徹さんが出てこられたタイミングだったんですね。

それまで世の中の一般的な「政治家像」というのは、ちょっと不信感があったりとか、裏があったり、腹黒いというようなイメージが強かったと思うんですが、都知事をやってた石原さんだったり、橋下さんだったりが、政治家にも関わらずちゃんと自分の言葉で喋っているのをみて、「言いたいことを言える世の中になってきたんだ」っていう風に思ったんです。

政治家のような国を担う仕事を「かっこいい!」と称賛するのは、映画とか漫画ではよくありますよね。特に海外の映画、ミッション・インポッシブルとか007とか、そういう映画の主人公のように、国のために自分を捧げる姿にみんな憧れはあると思うんです。

でも今の日本の政治家を見たときにそこにはギャップがあって「子供が目指したいような職業ではない」というのがみんなの本音だと思います。日本という国は制度がしっかりしているので、政治に興味がなくても十分に生きていくことができてしまいます。それは平和で幸せな国ということの表れなので、別に悪いことではないんです。

ただ、やっぱり今の政治家たちが、子供たちに憧れられるようなキラキラしたイメージかっていわれると、それは違いますよね。それをキラキラした職業にしていきたい

今後そういう時代が来たときに、自分が真っ先にキラキラ光っているような政治家になっていたい。齊藤みたいな人を見てると僕も政治家になりたい!って言われるような、その矢面に立つというか、そういうポジションに自分は立ってたいなと思っています。

今は政治家に限らず、自分の仕事をやりたくてやっているような、キラキラしている人っていうのは本当に少ない気がしています。子供からしたら「大人は何であんなことをしてるんだろう?」って思うような世の中だと思うんですよね。

齊藤

ちょっと政治的で、ベーシックインカム論に通じる話になるんですけど、は1回みんなから今やっている仕事を取り上げた方がいいと思ってるんですよ。

今「しなければならない」ものを1回全部取り上げることで余ってしまう時間。その時間をどういう風に使いたいですか?ってなった時に、何を感じるのか

コンビニや交通警備のバイトでも、例えばグラスを作るような職人的な仕事も、今やっている当たり前の仕事を取り上げたらどうなるか。

コンビニでレジを打って毎日常連さんがきて、日常的な会話が実は楽しかったんだな、とか、警備のこういうところが実は好きだったんだとか、どんな人だって自分の仕事の好きだったところに気付くと思うんです。

実は僕も、小学校から中学校にかけて野球を「やらされてる」感じだったんです。小学校4年生の時に野球を始めて、中学校では学校外のクラブチームに入って硬式野球を続けていたんですが、中学校2年生の5月にすごい大きな怪我をしたんですよ。

自分が好きで始めたはずの野球だったのに、小4から中2までの4年間は朝起きるのも苦痛やし練習もしんどいし、と何もかも嫌になっていたんですが、怪我で2か月ほど入院することになって、今度は野球をやりたくてもできない環境になったんです。

そうしたらもう練習に行きたくて仕方がなくて、松葉杖ついてみんなの練習や試合を見に行ったりするのがすっごい楽しくて。そのときに初めて、ああ、自分は野球が好きだったんだなって気づいたんですよ。

今やってる仕事もふと考え直す時間が生まれることで、その仕事に誇りを持てたり、楽しいことだったんだなと再認識することができるんじゃないか。僕はそのためにベーシックインカムはすごくいいのではと思っています。もしかしたらそうすることで、子供たちから見てもキラキラしてる大人が増えるんじゃないかな。

そういうところの改革も含めて政治の世界に

齊藤

もともとは先ほども言ったように、橋下徹さんの自己犠牲的な姿に憧れたところから始まった政治家の夢なんですが、実は今、それは180度変わっててあれはもうやっちゃいかんなと思っています。

今の世の中で競争力を高めるために必要なのは「キラキラして楽しい人」。自己犠牲ではない。それこそ子供たちに憧れられるような、キラキラする人材を集めることでどんどんと裾野が広がってくるので、結果的に政治家や行政を含めてクオリティの高い人材というのが確保できるようになるのではと考えています。

政治家を子どもたちの憧れの職業にしていくにあたり、僕はめちゃくちゃ適任なんじゃないんじゃないかな?くらいには思ってますね(笑)

今子供が憧れてる職業って何でしょうね?

齊藤

例えばユーチューバーとかは憧れの職業だと思うんですが、やっぱり純粋にキラキラしていますよね。キラキラした上に収入がしっかりついてきたら、自分のやりたいことも成し遂げられるし、自分の守りたいものも守れるし、そこの両立が図れるなら憧れの対象になるのは当然と思います。

高度成長期、バブルの時は所得倍増計画でみんなの所得がガンガン増えていったんです。バブルによってお金が生み出された時代だったんですが、今はお金ではなく圧倒的に「時間」が生み出されている時代だと思ってます。

例えばグーグルマップがあったり、GoProで手軽に撮影ができたりすることで、今まで必要だった膨大な時間コストが削減できるんです。なので時間バブルというか、そのおかげで時間を得た人たちが圧倒的に遊びや無駄なことに時間を費やすことができる時代になってきましたね。

その無駄に時間を費やす、無駄を楽しむっていうことの究極がまさにアドベンチャーレース。これが僕は究極中の究極やなって思っています。

今の時代にスマホも持たずに、わざわざお金をかけて山の中にしんどいことをやりに行く。この無駄さ。こういった無駄を楽しめる時代になってきたし、この裾野が圧倒的に広がってきていますよね。それはもう確信です。

そんな形で僕が政治家を目指していることと、アドベンチャーレースを発展させたいというのが僕の中では完全にひとつに繋がっていくんです。

2020年大会参加時のメンバー

世界に注目されるニセコの価値を知ってもらいたい

国内でもトップクラスに長距離で、しかも北海道ニセコという特殊な土地での開催となるレースをなぜやってみようと思ったんですか?

齊藤

堀江さんがニセコ滞在中に「ここでアドベンチャーレースをやってみたい!」と言ったのがすべての始まりでした。そこで僕が発起人として、NISEKO ADVENTURE RACEの運営をスタートしたんです。

全世界のアウトドアアクティビティが好きな人たちは、ニセコの価値を知っています。今、ニセコってレストランに行っても日本語のメニューがないんですよ。スノボとかをレンタルに行っても「ジャパニーズですか?」って、わざわざ日本人スタッフを呼びに行くんですよね。

安全で食がおいしくて、さらに世界一のパウダースノーを味わえるエリアで、全世界の人が注目している。そしてちゃんとそのニーズに対応しているのがニセコやったんです。

ニセコは日本の中で先進的にインバウンドを受けられて、なおかつ世界のVIPに合わせていくことができているんですよね。それを日本の多くの人に見てもらわないといけないなっていう危機感があったんですよ。みんな知らない間にこんな状況になってますよ、と。

なので「アドベンチャーレースをやろうよ」ってなったときに、堀江さんの中にそういう意図があったかどうかは分からないけれども、僕の解釈ではより多くの人たちにニセコの進化や日本の縮図を見てもらわないといけないなと思ったんです。

ニセコでイベントを開催することによって、より多くの人たちをこの地に招き入れないといけないなって思ったのが、NISEKO ADVENTURE RACEをやろうと思ったきっかけのひとつです。

実際に選手の宿泊施設やアフターパーティも豪華でした。

齊藤

第1回大会からこだわっていたことが、アドベンチャーレースだけではなく、その前後で過ごす時間の価値も一緒に提供したかったというのがあります。

第1回の大会の時に、この業界の相場で考えれば非常に高額な参加費15万円というVIPプランを設けて、立派なヴィラを用意してその時間を過ごすっていう価値を提供したんです。

そういったライフスタイルを大会を通して提示したかった。レースにきてスタートに立ってゴールするだけじゃなくて、ちゃんと前後の時間まで楽しんでほしい。パッケージとして楽しんでほしかったんですよ。

アフターパーティとかも含めて先進的に、日本で今までやったことのないレースとその前後の楽しみをパッケージで提供する、というのをこれからのNISEKO EXPEDITIONでも続けていきたいですね。

まさに無駄を楽しむ、心のゆとりを楽しむという。僕はその心のゆとりが人の優しさを生むと思っていて、その優しさが連鎖を生むことによって社会が幸せになっていくと思うから。ひとりひとりが優しくなれるその「ゆとり時間」を作る、NISEKO EXPEDITIONをやる意義っていうのはそういうところにあるんじゃないかなと思っています。

世界有数のパウダースノーで知られるニセコ

世界に注目されるニセコの価値を知ってもらいたい

難しい環境下で2年間大会を無事に開催することができました。今の気持ちをお聞きしたいです。

齊藤

コロナ禍のなかでも幸い大会を開催することができて、日本最高峰のレースとして公言もしています。自分たちにプレッシャーをかけるっていう意味でももっと「最高峰」らしいことをNISEKO EXPEDITIONでやっていこうと考えています。

まだまだ実現までは遠い道のりですが、2025年には5Daysレースという、夢と目標を掲げています。思ったより早くここまで来れたなというのが、この2年のレースを通して思ったことですね。僕らがやるんだ!という風に多くの人を巻き込んで進んできた結果として、非常に想定より早く進んでいるというのが僕の感触ですね。

今まで先輩の方々が日本でレースを開催する中で実現できなかったことを、田中正人さんをはじめいろいろな方の力を借りながら、「僕らが実現していきます!」と大きな口をたたかせてもらってる、大風呂敷を広げさせてもらっている感じです。バトンを僕らが勝手に受け継いでいるというか、むりくりバトンを取った感じですね(笑)

今後の大会では、海外レースに出てるようなチームをもっと増やしたいですね。

齊藤

第1回大会もコロナさえなければニュージーランドからNathanが参加して、イーストウィンド田中正人さんと競ってもらうという予定はありました。

結果的にNathanは来日できず、正人さんは裏方でサポートいただくという形になりましたけど、海外だけでなく本州のアドベンチャーレーサーの方々にもまだまだ参加いただいてないので、そういう方たちを誘致して、その方たちにも積極的に参加したいと言っていただけるようなレースに作りあげていく、そのブランディングをしていかなければならないですね。

2021年大会ではスイーパーなど運営スタッフを担当

挑戦するべきタイミングとは

本州でこれまで活躍してた人たちからすると、NISKEO EXPEDITIONは正直ちょっと胡散臭いイメージを持たれていると思うんですよね。

齊藤

そうですね。僕たちができることは今までと変わらないんだけど、世の中の流れにも合わせつつ、どういう見られ方をされているのかは考えなくてはいけないフェーズにきているとは思います。

でも、僕らがもっとも考えなきゃいけないのはそこじゃなくて、例えば極端な言い方をすれば既存のアドベンチャーレーサーの方々からダメ出しをされたとしても、場合によってはその意見を無視してでも裾野を広げていく活動が大事だと考えています。マイナースポーツが発展していくにはまず圧倒的な母数がいりますから。

イメージとしては小学生がアドベンチャーレースごっこをするような、そういう世の中になることが目標です。小学生が日常的な遊びの一環で体験できて、お金がかからない。それがスポーツとして一番大事だと思います。日本はその環境自体はあるのに、実際にはいろいろなハードルがあってできない。保守的ですよね。そういう楽しさに気づくためには、常識にとらわれず「挑戦」してみるのがやっぱりいいですね。

「挑戦」という意味ではそれこそ齊藤さんはいろいろなことに挑戦されてきているんだと思います。

齊藤

そうですね。いろいろやっているけど、全部その時に本当にやりたいことに全力を注いでいます。

実はこれまで生きていて、資産がプラスになったことがないんです(笑)自分のお金と時間は全部やりたいことに使い切っています

僕は独身という生き方を選んでいるのでなんとかなってるけど、子どもが2人とかいたら、毎日大変だと思います(笑)優先順位が違うんですよね。

そういった意味では僕は経済的には裕福ではないですが、でもこの日本に生まれたことでそれだけで世界のトップに入っているから。生活で困ることはないんだから、借金しても生活保護を受けてでも、やりたいことにチャレンジし続けなければと思っています。チャレンジをしないことが一番自分の時間を無駄にしてるんですよね。

挑戦へのトリセツというタイトルでインタビューをしてきましたが、今なにかにチャレンジしたいと考えている人にエールをお願いします。

齊藤

話の腰を折っちゃうかもしれないけど、僕は「挑戦しないことも挑戦」と思っています。今は本当に、頑張りすぎるがゆえに笑顔を喪失している人が多すぎる。努力しない、がんばらない、挑戦しない。これも全然良しなんですよ。

ただもし何かに挑戦したいけどなかなか成し遂げられないという人がいて、その人を後押しするような言葉をかけるとするならば、それは「自分と会話する」ですね。

僕は心の中にもうひとりの「さいとうけんいちろう」を飼っています。僕が何のために行動するかっていうと、そのもうひとりの僕を笑顔にするためなんですよね。

僕はいつもその自分と対話してます。その人が笑顔じゃないのが一番ダメです。もし頑張ろうとしていることがその「もうひとりの自分」を笑顔にできていないのであれば、それは一度考え直したほうがいいのかもしれません。

今挑戦しているのは政治の世界ですが、自分はずっとスポーツで生きてきたので、正直あまり頭は良くないんです(笑)

政治家は頭の良い人の集まりだから、実は一番不得意なところに挑戦しているんですが、それがめちゃくちゃ楽しいんですよ。

僕、もともとスポーツの中で泳ぎだけはできなかったんです。20mくらいしか泳げなかった。でもなんでもスポーツができる齊藤健一郎が、泳ぎだけはできないというのが嫌だったんです。泳げるようになりたいか?と自分と対話した結果、その答えは強烈に「Yes」だった

なので泳ぎを克服するためにハワイのトライアスロンに申し込んで、無理やり理由を作って練習を重ねるうちに、いつの間にか泳げるようになっていきました。

その時に苦手なことを克服することの楽しさに気づけたおかげで、今、笑顔で政治に挑戦することができています。対話することでもうひとりの自分が笑顔になったなら、それは「挑戦するべきタイミング」がきているのかもしれませんよ。

齊藤さんの挑戦はまだまだ続きます

NISEKO EXPEDITION 2022 Official WEB

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