【記事】「レースをきっかけにパドリングにもはまってほしい」 モリシャン(モリシャンアドベンチャー) インタビュー
2020年、2021年と2年連続でNISEKO ADVENTURE RACEに出場。ご自身でもレースイベント「モリシャンアドベンチャー」を主催するモリシャン。
参加したレースの中で心に残ったことや、どういった経緯でアドベンチャーレースやパドリングに傾倒していくことになったのか、またモリシャンアドベンチャーとして今後挑戦していきたいことなど、2021年大会に参加したメンバー3人にお話をお伺いしました。
〈 聞き手=まつもと(ゆるやま!)〉
羊蹄山に登らされるなんて考えてなかった
2年連続の参加ですが、2021年のレースはどうでしたか?
モリシャン:2021年はいつも一緒に御岳でカヤックをやっている女の子3人と、カメラマンのタケを含めて5人で出場しました。「女子チーム はじめての挑戦」という位置づけで、僕とタケはそれを見守るみたいな感じです。
楽しくできたらそれで十分かなって思っていたんですけど、蓋を開けてみたらなかなかよい順位だったので嬉しかったですね。やるじゃん!って。
印象に残っていることはありますか?
モリシャン:最初にマップをもらって、スタートのセクションが羊蹄山だと知ったときが一番アツかったです。まさか羊蹄山に登らされるなんて全く考えてなかったので。
一昨年出たときはコンビニに寄れたりとか、休憩はすぐに取れる環境だったので、そういう感じになると思い込んで、楽しくやりましょうっていう雰囲気で出てみたら全然違った(笑)
一日半のレースで羊蹄山なんか登ったらそれだけで全体の時間の半分くらい使っちゃうのに、まさかそんなことしないだろうと。衝撃すぎて、ガーン!みたいな、頭真っ白みたいな(笑)それが今回のレースの一番のピークですね。
しかも結構暑かったから、途中コンビニで水とかおにぎりとか買って行こうねっていう話をしていたのに、道中ひとつもコンビニがなくて。結局登山口のトイレの水しか補給場所がなかったんですが、そこはベテランの経験を活かして「とにかく水!」とチームメンバーにたくさん持たせました。女子3人の分はもちろんですけど、実は自分の水のことを一番心配していました(笑)いつも真っ先に僕が水を飲んでしまって、水切れすることが多いので。
羊蹄山の景色はどうでした?
モリシャン:景色はきれいだったはずですが、みんな楽しむ余裕なんてあったのかな?
一同:(笑)
モリシャン:自分もスタート時の「羊蹄山か?本当に羊蹄山を登らされるのか?」という疑問をずっと引きずってしまって、あんまり景色楽しむ余裕はなかったです(笑)
あとは下山途中のラインオリエンテーリング(地図上の現在地と思われるところにマークを書き込むチェックポイント)がかなり嫌らしい位置で苦戦しましたね。
我々アドベンチャーレースやってるものとしては「高度計に頼るのは恥!」と微妙な等高線の違いとか形とかを見て一生懸命考えたんですが、結果的に間違えてました(笑)
羊蹄山は夜9時くらいになっても下山できないチームもいて、まさしく核心部となったセクションだと思います。
タケ:そんなに時間がかかると思ってなかったチームはたくさんいると思います。普段から山に登ってる人はコースタイムとか想像つくでしょうけど、登り慣れてないと難しかったんじゃないでしょうかね。
モリシャン:そういうところも含めて、振り返って考えるとすごい印象深い、良いコース設定だったなと思います。こんな無茶なコースはもう二度と味わえないでしょうね(笑)
真夜中のラフティングを体験
他に記憶に残っているセクションはありますか?
モリシャン:羊蹄山を降りて、川に向かうまでのロードも熱かったです。僕らは川の人間なんで、アドベンチャーレースといったらラフティングなんですよ。
なので絶対にラフティングセクションにはたどり着きたかったんですが、下山場所からラフティング起点まで8kmくらいあったんですね。あんまり走れるチームではないので距離的にちょっと無理かなと思ってたんですが、ドラマチックな感じにギリギリで間に合いました。
ミホ:本当に1分前くらいに滑り込みでした。
モリシャン:そのおかげで真夜中のラフティングを体験することができました。普段真っ暗な時間に艇を漕ぐことはできないのでとても楽しかったです。
川のせせらぎと星空を見ながらみんなでまったり漕いでいたんですが、ギリギリで関門を抜けられたことに満足しちゃって、次に向かって頑張ろうっていう気持ちは一旦なくなっていました(笑)
最終的に僕たちはE-bikeセクションのスタート地点であるCP16にギリギリ間に合わなくて、ショートカットになったんですが、 そこまででも充分楽しむことはできました。
タケ:CP13とか直前の関門も1分前通過みたいな感じだったんですよね。
モリシャン:関門設定がよい感じだったので、チームの集中力が切れる前に「ここは一踏ん張りしよう!」と緊張感を維持できたのがよかったです。2020年のレースは眠くなるシーンが正直あったんですけど、2021年はちょうどよかったですね。
あとはCP10の効き水を間違えてしまったのが悔しい。僕らアドベンチャーレーサー界隈では食通ってことになってるので(笑)次は絶対に間違えないです。
効き水は割と雰囲気で選んだチームは当たって、プレッシャーでいろいろ考えてしまったチームは間違えていたみたいです。
ミホ:だいぶ時間使って考え込んでいましたもんね。
モリシャン:そうね…でもそこは雰囲気担当としてはもっと意見を押してくれてよかったんじゃないの?(笑)
ミホ:次に効き系のチャレンジがあるときは頑張って押し切ります(笑)
レースの中でパドルの楽しさにハマっていった
アドベンチャーレースに関わった人はみんな知っている「モリシャン」ですが、モリシャンってその実何者なんですか?
モリシャン:モリシャンは「シャンパン好きの森さん」ですね(笑)そういう存在です。レース歴はそんなに長くはなくて、2017年くらいから始めました。
その前はトレランをやっていたんですけど体力的に限界を感じてしまって。他のジャンルに手を出そうってなったときに、地図読みとか水物とか、バイクが楽しめるアドベンチャーレースにはまっていきました。
アドベンチャーレースをやる中で、川の競技を集中してやるような大会を作りたいと思って、2019年に東京の御嶽で始めたイベントがモリシャンアドベンチャーです。 そのイベントを告知したら、飲み友達の堀江さんと斎藤さんが出場してくれたんです。
それからはよく一緒に遊ぶようになって、Real Questというレースやニセコアドベンチャーレース第1回大会などを通じて、堀江さんチームとモリシャンアドベンチャーはライバルのような存在です(笑)
もともとパドルスポーツをされていてその流れでアドベンチャーレースに出られたと思っていたんですけど、逆なんですね。
モリシャン:そうですね。アドベンチャーレースをやる中で、パドルの楽しさにハマっていったという形です。パドリングレースに強いチームは国内になかなかないと思うので、その強みを生かしていけたらなと思っています。
この4年くらいはパドリング一筋で、パドリングをやりたすぎてジョギングも辞めました(笑)普段は生活のほとんどの時間を練習に当てていますね。
国内ではパドルで順位がつくようなアドベンチャーレースは少なく、他の競技が重要になってしまうことが多いんですが、海外ではパドルの比重が重いレースもあるのでいつか参加してみたいですね。ただそのときは僕は監督として同行して「頑張れ!頑張れ!」ってみんなを見守る感じで(笑)
最終的にはレースラフティングで名を上げたい
普段は何をされてるんですか?
モリシャン:え?普段?えっと、パドリングの練習をしています。モリシャンアドベンチャーは別に企業とかではなくて、モリシャンと仲間たちみたいな集まりなんです。
僕以外のメンバーはみんな各々に働いていますけど、僕は働かないでずっとパドリングの練習をやってますね…ほら、有名な某アドベンチャーレーサーも「一切働かない」って言ってるじゃないですか。あれと同じです(笑)
今年のNISEKO EXPEDITIONは出場予定ですか?
モリシャン:モリシャンアドベンチャーの枠の中から1チーム出ようとは思ってます。メンバーは今のところ内緒です。
去年の大会は参加者としてとても満足度の高いレースでした。なので何か特別に進化しなくても、同じクオリティでも十分楽しめるなと思ってます。今年はさすがに羊蹄山ないでしょうし(笑)
渇水期の開催なので難しいのは分かっているんですが、本当は川でもっと楽しめるコース設定だったらなお嬉しいです。
モリシャンから読者に伝えたいことはありますか?
モリシャン:アドベンチャーレースの中でパドリングの楽しさを知ったので、皆さんにもぜひ体験してほしいなと思っています。レースで初めて艇に乗るっていう人も多いかもしれないけども、それだけで終わりにせずに、ぜひ川の楽しさっていうのを体感してほしいです。
特にこれから始めるということであれば、ぜひラフティングをやってみてください。自分は今はカヤックをメインにやってるんですけど、最終的にはレースラフティングで名を上げたいと思っています。4人とか6人とかで1つの艇を動かすのはとても面白いので、まずはツアーガイドさんが同乗するラフティングをやってもらって、その魅力を体験してほしいと思います。みなかみのカッパCLUBでも、みたけレースラフティングクラブでも、近いところ、お好きなところでいいので、ぜひ一度楽しんでみてください。
アドベンチャーレースをきっかけにして、ぜひパドリングにもはまってほしいですね。