【記事】「人生でこんなにいい汗を流す29時間はきっともうない」 Rafting Club Strom インタビュー
2021年7月に行われたNISEKO ADVENTURE RACE2021に初出場した大学生チーム「Rafting Club Strom」。普段は東京・多摩川を中心にレースラフティングに励んでいる私たちが、北海道はニセコの大自然の中で奮闘した思い出を全員で振り返りました。
全員がアドベンチャーレース初心者というチームで、楽しかったこと、大変だったことや、ラフティングレーサーとして今年のNISEKO EXPEDITIONに期待することなどを話しました。
〈 話し手=岸田、片倉、田嶋、井関(司会)〉
4人で漕ぐために、絶対遅れられない!
アドベンチャーレース初挑戦でしたが、みなさんの印象に残っていることは?
田嶋:やっぱり沢の中でチカチカ光るCP3を見つけた瞬間が一番うれしかったかな。探してるとき実は高度を間違えてて、結構迷ったよね。岸田とかぐんぐん藪の深いところまで行っちゃうし。俺は鈴の音でみんなの位置がわかってたけど、みんなは迷子だったでしょ(笑)
あれが最初の人のいないチェックポイントだったから、どんなものか想像もつかなくて。どんどん日が落ちて暗くなっていくし、「これ本当に見つかるのかよ」って思ってたけど、見つけたときは嬉しかった。
片倉:俺は、やっぱり関門を突破できるかできないかで、切羽詰まってた時のことは印象深いかな。全部の関門ぎりぎりだったけどね(笑)
その中でも、ラフティングセクションに行くまでは大変だったな。新潟大学のチームと偶然合流して、一緒に歩いてたらいつの間にか道を間違えてたんだよね。細い林道みたいなところ行っちゃって。それまで順調で結構時間に余裕があったはずなんだけど、どんどん時間が過ぎていって。
レース前に膝を故障して不参加になった(井関)りさとラフトだけは特別に4人で漕げる事になってたから、「そこの関門には絶対遅れられない!」って必死に走った。
田嶋:片倉に走らされて(笑)、あそこは本当につらかった。「次の標識までがんばろう」って言われて、そこに着いたら「止まったらつらいからもうちょっと走ろう」みたいな。
片倉:でも、あれのおかげで間に合ったでしょ(笑)
岸田:ペース作ってくれたのは本当にありがたかった。自分でもランニングの練習してたのも良かったし、してなかったら半分も走れなかったと思う。でも、荷物を持ってるとキツさが全然違うよね。そのトレーニングもしておけば良かった!
井関: 私は運営スタッフの人たちと一緒に川で待ってたんですけど、他のチームが明るいうちからやって来るなかでストロームを待っていて。期待しつつ、もしかして間に合わないんじゃないかな?と心配しつつ、ご安全に来てくれたらいいなと思っていました。
携帯でみなさんのGPS見てたら、すごいスピードで来たから、「待ってました!」っていう感じで迎えに行ったら、私とみんなのテンションというか、疲労の差がすごかった(笑)
田嶋:うん、なんでこいつこんなに元気なんだろうって思ってた(笑)
やっと辿り着いたラフティングセクションはどうでした?
井関:ラフティングをまる3年やっていますけど、ナイトで漕ぐなんて初めてでしたよね。しかもスカウティング(川を実際にくだる前に下見すること)をせずに新しい川をくだるっていうのは、なかなかエキサイティングだったと思います。全然前が見えなくて。
左漕ぎの2人はたくさん漕いた気がしますが、右後ろ(田嶋)は休んでましたね(笑)
田嶋:いやいや、漕いでたよ!!次のセクションを頑張れるくらいには温存はしてたけど。あの状況で出せる限りの最大出力は出してたつもり。
岸田:いろいろ言ってるけど、普段の10パーセントぐらいの漕ぎだったよね(笑)
人生でこんなにいい汗を流す29時間はきっともうない
なんだか、大変だったエピソードがたくさん出てきますね…実際に出てみて、初心者あるあるみたいなことってありましたか?
岸田:やっぱり、睡魔との戦い。夜を越えて、2日目の正午くらいが眠気のピークで、いないはずの(井関)りさの幻覚が見えてた(笑)。アドベンチャーレーサーの方々、どうやってあれに耐えてるのか気になる。
最後の関門を突破してちょっと時間に余裕が生まれたときに、5分くらい道端で横になって寝たのが気持ちよかったな。一瞬で眠りに落ちた。あの時は、片倉が起こしてくれたけど、私と田嶋は全然起きる気なかったよね(笑)。
片倉:俺はナイトラフトが終わった後が寒くて、体調的に一番きつかった。靴下とかびしょ濡れで、替えもなかったから。コンビニに入って新しい靴下に替えた時に、生き返った。持ち物とかも、やっぱり最初だから何が必要かわからなかったよね。
田嶋:バイクも普段乗らないから、慣れるまでスピード出すの怖かったな。ギアもどうするのが適切かわからないし、山道走るのもコツがいるというか。山道で相当、体力も気力も持ってかれた。
岸田:バイクセクションの田嶋は、本当にテンションが低くて心配だった。CP15をスルーしちゃってちょっと探しに戻る時も、一人だけ全然着いてこなかったもんね(笑)。
こうやって話してると大変なことばっかり思い出すけど、一つ一つのチェックポイントを見つけた時とか、最後のゴールの瞬間は嬉しくてたまらなかった。29時間近くかかって、ビリだったけど、オリエンテーリングセクション以外は完走してのゴールだったから。先に着いていた大人たちが、ビール飲みながら祝ってくれたのもすごく嬉しかったし「出場してよかった、人生でこんなにいい汗を流す29時間はきっともうないだろう」って泣きそうになった。
そもそもアドベンチャーレースに挑戦しようと思ったのはなぜ?
田嶋:僕たちは、一橋・津田塾大学ラフティング部ストローム会という部活のメンバーで、いつもはレースラフティングをやっているんだよね。東京の御岳とか、群馬のみなかみとか、徳島の吉野川とかでいろいろな大会に出ていて。
そんななか去年の4月にあった御岳カップの閉会式で、NISEKO EXPEDITION運営の春木さんがこのレースの紹介をしてくれて。「出たい学生いませんかー」ってね。それで、新潟大学の探検部も出場するっていうから、僕たちも挑戦してみたいなって。
岸田:それに私が乗って、部員みんなに声をかけてみたら、あっという間に元気いっぱいな4人が集まった(笑) 。
36時間をフルに使って楽しみたい!
NISEKO EXPEDITION2022の目標は?
片倉:今年は、チーム編成は変わるけど、エクストリーム部門に1チーム、ディスカバリー部門に1チーム、ストロームから出る予定だね。俺はエクストリームの方に出るけど、目標は完全完走。やっぱり、関門に間に合わなくてカットされちゃうと、その部分は楽しめないっていうことだから。
去年のオリエンテーリングセクションも、すごく難しかったみたいで俺らでは歯が立たないとは思うけど、でもちょっと挑戦してみたかった。今年は36時間らしいけど、その時間をフルに使って楽しみたい!
今後のニセコに期待することは?
田嶋:やっぱりラフティング部としては、川のセクションを増やしてほしいというか、ラフティングがもう少しレース結果に影響するようになったら戦えるかな。
夜も楽しいけど、昼にしてスラロームのゲートを置いたりとか、ポイントを作ったりして。ゲートを通れなかったら、プラス何時間、みたいな。技術的な部分で差がつくようになったらさらに楽しいなって。
井関:それもそうですし、ラフティングの新たな面白さ、魅力が、アドベンチャーレーサーの方々によって発見される機会になれば、素敵ですよね。
岸田:ストロームは、毎年ラフティングの世界大会に出場するくらい川に熱心だからね。
ちなみに、岸田と井関は2022年5月25日から6月1日に、ボスニア・ヘルツェゴビナで行われる「World Rafting Championship 2022」に、23歳以下女子部門日本代表として出場します!応援よろしくお願いします。
片倉:うお、急な宣伝(笑)。あとは、もともとコンパスも使えなかった初心者としては、レース前に東京でオリエンテーリングの講習とかを開いてくれたのがすごくありがたかったから、そういうイベントがもっと開催されると、アドベンチャーレースとは縁がない学生とかも飛び込みやすくなったりするのかなと思いました!
一同:今年も、楽しみにしています!