【記事】「チーム競技の楽しさを知ることができた」 反中 祐介(TEAM KOKAJI JASO) インタビュー

2021年7月に行われたNISEKO ADVENTURE RACE 2021で、見事優勝を果たしたTEAM KOKAJI JASO 反中 祐介さん。

プロトレイルランナーとしても活躍する反中選手。普段は個人競技をメインに活動する中で、チーム競技であるアドベンチャーレースにどのような印象を持ったのか、またトレイルランニングの普及に向けての活動(Libra Blue Sheep -LBS-)でどのようなことをされているのかなど、お話を伺いました。

〈 聞き手=まつもと(ゆるやま!)、春木望(運営スタッフ)〉

結婚生活ってこういうことなのかなって

レース全体の感想とか良かったところ、印象に残ったところはありますか?

反中 祐介
Team 小鍛冶蛇走

今までずっと個人競技だけをやってきて、ある意味エゴに生きてきたというか、自分がこうだって決めたらこう!みたいなものがメインだったんです。

陸上競技をずっと続けていて、それ以外も剣道とか水泳とか囲碁とか一対一の競技だけをやってきたんですよね。もちろんその中でも団体戦はありますけど、結局は個人の成績の足し算じゃないですか。だから今回初めて「本当のチーム」というものを体験しました。

個人だと自分でやらない限り誰も補ってくれないし、全部自己完結なんですけど、チームでいるとお互い得意なことを甘えたり分担したりして全部抱え込まなくていいので、身構え過ぎずレースと向き合えてすごい楽しかったです。

レース中は山中さんが序盤からやられてしまったので、代わりに荷物持ったりとか持ちつ持たれつみたいなことができて、楽しいところは掛け算、苦しいところは割り算みたいな感じで「結婚生活ってこういうことなのかな?」みたいなことを想像しながら楽しんでました(笑)

個人競技出身の人はチーム戦であることが重荷になることも多いみたいですが、そういう感じはなかったんですね。

反中

全くなかったですね。今回は山中さんが地図読みを練習していて、谷口さんも読めるというのを知っていたので、僕と山路さんは無理して地図をみるのはやめようって話をしていました。

何人も地図をみてると意見が割れることもあるし、地図以外に目をむけることで分かることもあったりするので。2人が読図の沼に入りそうな時は俯瞰でみて「この川ってこの線じゃないですか?」みたいな意見が出せたのでバランスが良かったと思います。

映像をみててもずっと皆さん元気な印象でしたけど、チームはどんな雰囲気でした?

反中

うちのチームはストイックになり過ぎず、できるだけ大会を通して楽しみましょう!っていうスタンスだったんです。山中さんがチームのすり合わせというか、チームの方向性みたいなところを事前にちゃんと合わせてくれていたので、いい意味で頑張り過ぎなかったんだと思うんですよね。それがなかったら「もう休む暇なんかないですよ!」みたいにギスギスした空気になってたと思います(笑)

それに対して三浦先生とか伊藤さんとかのKOKAJI LEGENDチームがめちゃくちゃストイックで、女子の滝澤さんはスタートからロープで引っ張られてたりとか、めちゃくちゃゴリゴリに突き進むスタンスでやっていたので、チームのカラーで出ていてすごく面白かったです。

あとは一番始めにリーダーがダウンしちゃったので…飲み会で誰かが酔っ払い出したらもう酔えなくなるのと同じような感じはありました。つぶれた子を介護しなきゃいけないからもうこれ以上酔っ払い増やせない、みたいな(笑)

皆さん穏やかなチームでしたね。

反中

そうですね。穏やかでありながら強い人の集まりというか。女性の山路さんも気持ちがめちゃくちゃ強かったです。羊蹄山降りて沢沿いの藪に入っていくチェックポイントがあったんですが、その手前で目を負傷したんですよね。多分俺だったら辞めたなっていうぐらいの。

すごい目が充血してたんですけど「絶対やめません」って。その時も彼女が一番笑顔だったので、僕はそれに救われてました(笑)そういうコミュニケーションも一人のレースだったら絶対ないじゃないですか。ずっと話したり食事したりするチームメイトがいるのは本当に新鮮でしたね。

谷口さんはとにかく心強いなっていう印象です。フィジカルも凄いですしトレランの大会でも上位に必ず食い込んでくるような人で、走力とか体力面ですごいリスペクトできる人なので、この人がいればとりあえず大丈夫っていう。谷口さんいるなら僕はそんなに頑張んなくてもいいやって(笑)

山中さんと谷口さんは常に地図読んだりとピリピリするところはあったと思うんですけど、2人のお陰で余裕もあって、レースを進めていく中で安心感はすごい大きかったです。

左から反中 谷口 山中 山路(敬称略)

ネガティブな言葉は出さないように

映像ではダイジェストになっちゃったんですが、CP18-19間の地獄の藪こぎはどんな感じだったんですか?

反中

もう最悪でしたね(笑)でもルートに関しては2人に完全に委ねてたので。委ねてるくせに文句言うとか駄目じゃないですか。まじかよとは思いましたけど、ネガティブな言葉は絶対出さないようにしていました。言うとしても「アドベンチャー大好きっすね!」とかポジティブな感じに(笑)

あとは沈黙が一番しんどいとは思ったので、声だけはずっと出すようにしていました。山路さんと会話をしたりとか音が途切れないように気を付けたりとか。

他に大変なセクションはありました?

反中

ナイトオリエンテーリングセクションは同じようにえげつなかったですね。あれ単体でもひとつの競技として結構大変なくらいなのに、アドベンチャーレースの途中にこんなの控えてたんだみたいな。全然おまけですることじゃないなっていう(笑)

結果的には全部回ったらめちゃくちゃ時間がかかってしまうので、最短で行けるコントロールだけ回ってあとはペナルティをもらうという作戦で切り抜けました。オリエンテーリングを監修された信原さん(北海道オリエンテーリング協会 理事長)が「待ってました!」みたいな感じでスタンバイしてくれてて、それはすごい申し訳なかったです。こんな面白いコース提供してくれてるのにちゃんと回れなくてすみません!って信原さんに謝りながらオリエンテーリングセクションを後にしました(笑)

ナイトオリエンテーリングは1周1時間以上かかるコースを3つ回る必要がありました

チームでの役割分担が自然とできるようになった

普段の活動についてもぜひ聞かせてください。

反中

ちょうど去年の大会の直前、5月ごろに独立して、選手活動とあわせてトレイルランニングの普及と、それを通した地域振興という活動(Libra Blue Sheep -LBS-)を始めました。なかなか大会が安定して開催されなかった時期だったので、選手活動は難しいだろうなって思っていたんですよね。なのでその分、普及活動の方にウエイトを置いた一年でした。

トレイルランニングの普及には、もっと関係人口が増えることが必要だと思っています。例えばトレイルランナーに対してトレランの練習会を開いたとしても、すでにいるランナーの知識や経験は深まるけど、認知そのものはあんまり広がらないんですよね。なのでそもそも走るのが嫌いな人とか、ちゃんと走ったことがない人とかに「面白いランニング」を提供するために、クロストレーニングを兼ねた異文化交流っていうのをいろいろな形で起こしていて。

例えばスポーツ店と協力して、横乗りスポーツをする人に対して刺さるランニングのスタイルを提供したりとか、自転車に乗る人とランナーの異文化交流をしたりとか。ランナーではない人に対して、トレランやランニングの面白さを絶対の自信を持って提供するというのをやってたらいろいろと広がりが出てきていて、それをビジネスとして動いているという感じです。

アドベンチャーレースというチーム戦を経験した中で、個人の活動に参考になりそうなことはありましたか?

反中

もともとはチームというものにいい印象はなかったので…足の引っ張り合いじゃないですけど「地獄絵図みたいになっちゃうのかな?」ってイメージを持っていました。

辛い時こそ人間の本性って出るじゃないですか。建前も言えなくなってもう核心をつく言葉のやり合いになるのかなとか思ってたんですけど、実際には全然楽しくて、今は逆に「みんなやった方がいいのに!」と思っています。自分が企画している大会とかもチーム項目を作りたいぐらい(笑)食わず嫌いでチームを嫌っている人って結構多いと思うので。

あとはトレランの普及活動に関しても、何か企画するごとに毎回チームが自然とできるようになりました。例えばアドベンチャーレースなら、地図読みが得意な人がいれば全員が読む必要はなくて、ベクトルさえ同じ方向に向いていれば役割分担した方がチームが潤滑に動く、というのと同じように、ベクトルが同じ方向さえ向いていれば専門的な内容は得意な人に任せて、自分はその人のフォローに回るようにしたりとか、チームを作るときには役割分担をまず考えるようになりましたね。

僕は今YouTubeを始めたいなと思っているんですが、一緒に手伝ってくれるって言ってくれてる人がいたので編集はその人にお願いして、編集以外はこちらで何とかするといった感じに役割分担を考えています。何もかもを一緒にやるのではなくて、任せるとこは任せてその人の負担になることをフォローするみたいな分担をすごい意識するようになりましたね。そのおかげで足取りが軽くなるので、他にもできることが増えたりとかポジティブに考えられるようになりました。

今後NISEKO EXPEDITIONに期待されることはありますか?

反中

今は時期的に難しいところもあると思うんですけど、THE スポーツ・ツーリズムとして、地元の人とコミュニケーションを取ったりとかローカルな食べ物を振る舞うエイドを増やしたりとか、そういった部分をもっと出していってほしいです。そういう風にその土地の食とか文化というのをもっとレースに取り入れていければ、地元の人たちの協力もずっと得やすくなると思います。

実は今年は別の大会が重なってしまうので、NISEKO EXPEDITIONにはちょっと出れないんですが、自分の中で「めちゃくちゃなメンバーをたくさん集めてチームを作りたい!」っていう夢があって。日本全国のゴリゴリのトレラン選手として生きている人たちと一緒に出てみたい。レースが3DAYSぐらいになった時にふわっと戻ってきて、ダンジョンのラスボスみたいな感じにみんなの前に立ちはだかりたいと思っています(笑)

ラスボス「チーム 反中」楽しみにしています!

NISEKO EXPEDITION 2022 Official WEB

VIDEOS - 映像

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