【記事】「山中さん。序盤の序ですよ」山中 真(TEAM KOKAJI JASO) インタビュー

2021年7月に行われたNISEKO ADVENTURE RACE 2021。さまざまなドラマの中壮絶なトップ争いが繰り広げられた本大会で、見事優勝したTEAM KOKAJI JASO

そのリーダーを努めた山中 真選手。どんな経緯でこのチームを組むことになったのか、前半体調不良に悩まされながらもどう乗り越えていったのか、そして大会スポンサーの立場から今後のレースへの想いなどをお伺いしました。

〈 聞き手=まつもと(ゆるやま!)、春木望(運営スタッフ)〉

辛さも楽しみのひとつ

レースに出場してこういうところが良かった!とか、面白かった!というところはありますか?

山中 真
Team 小鍛冶蛇走

なんと言ってもスタート直後の羊蹄山が最高でしたね。天気もよく景色もバッチリでした。羊蹄山はもともと年1回登るか登らないかぐらいですし、登ったことのない初めてのルートだったので楽しかったです。ただ一番最初のセクションよかったです。羊蹄山が最後だったら多分死んでいると思います(笑)

MTBセクションはちょっと特殊なルールではありましたけど、かなり面白い体験でした。E-Bikeオプションについては、僕は反中さんと谷口さんの登りに自転車でついていくのは無理だと思っていたので、ルールを聞いて「もう絶対借りるぞ」って即決しました(笑)

でも電動の力を借りて2人を置いてガンガン登っていったら、勢い余って別のルートに入ってしまって、結局2倍くらい走っちゃいましたけど(笑)CP18に最短でたどり着くルートとは逆側からアプローチしちゃいました。

他にもナイトラフティングもなかなか体験できることではないし、エイドで出されるご飯も美味しかったです。エイドまでの前半は特に体調が悪くてコンディションとしては微妙だったんですが、その辛さも楽しみのひとつみたいなところはあったと思います。

今回のチームメイトはどういう経緯で集まったんですか?

山中

僕がプロトレイルランナーの反中さんを誘ったのが最初ですね。コロナの影響もあって大会が少ない時期だったので「今ならいけますよ!」って感じでたまたまOKをもらうことができました。

山路さんは反中さんが誘ったんですけど、もともと仲がよかったとかそういう訳ではなくて、反中さんがアウトドアショップ秀岳荘で自転車を修理したときに対応してくれたのが山路さんで、誘ったら一緒に出てくれることになったという。

山路さんはもともとロードバイクをやっていた方なので、ずっとにこやかなんだけどレース中一度もバテたりしなかったすごいタフな方です。MTBセクションは完全に僕のほうが置いていかれちゃうような感じでした(笑)

もう一人の谷口さんは去年の優勝チームメンバーですが、どういう流れで参加したんですか?

山中

最後の一人はできれば年齢が若い子がいいよねということで、20歳の人を誘ってたんですよ。だけどその人が怪我して出れなくなってしまって。

それで「去年も出ているけど、谷口さんもう一度レースに出ませんか?」という形でお誘いしたらふたつ返事でオッケーもらったっていう。大会の2、3週間前ぐらいに決まったので「マウンテンバイク壊れてるかもしれないです」って言いながらも、なんとか大会に間に合わせてくれました。

撮影でも思いましたが、皆さんほんわかした空気のチームですよね。

山中

そうですね、あんまり頑張ろう!っていう空気もなかったですから。絶対勝とうとかも言わなかったし。反中さんや谷口さんは余裕があったのでもっと速くいくこともできたと思うんですけど、僕がかなり引っ張ってたんで…その辺がこう、キャプテンでありながら足を引っぱるっていう…何も言えないみたいな(笑)。

反中さんはその前に出場していたレースの筋肉痛が残っていたので「歩いてると筋肉が固まるから走りたい!」ってずっと言ってたんですよ。羊蹄山下山からラフティングまでのロードでもそうだったんですけど、直前のCP3で山路さんが目を怪我して結構精神的にも落ちてたんで、焦らせるのはよくないなと思い、その辺はうまく調整しながらちょっとずつジョグするみたいな感じで進んでいました。

まあ本音をいえば、上手いこと理由付けて僕が走りたくなかったというのもあるんですが(笑)

この日羊蹄山の登りは本当に暑かった

僕の存在がアクシデントなんじゃないかって

地図読みに関して、普段から何かされていますか?

山中

NISEKO ADVENTURE RACEのオリエンテーリングセクションを監修した信原さんが北海道でよく大会を開いているので、タイミングが合えば出るようにしています。KOKAJI LEGENDの伊藤さんもよく出ていますよ。

読むこと自体の経験はあるので落ち着いていれば問題ないんですけど、20時間もレースをやっているともちろんずっと冷静でいられるわけもなく…この間のレースでもCP18からCP19までのルート取りを間違えて、MTB持ったまま藪尾根に突っ込むという大ミスをしました(笑)

今思えば地図を上下逆にみていたようなんですが、自信を持ってみんなでそっちに行っちゃった。行き止まりになった段階でどこにいるのか分かんなかったっていうのも問題でしたね。地形をみて今どこにいるのかが判断できれば、多分戻った方がいいよねっていう話になったはずなので、そこはかなり冷静さを欠いていたと思ってます。

そこまでの道のりも結構辛かったのでこのまま道路まで降りちゃおうってなったんですが、思ったより全然遠くて死ぬかと思いました。あの時は、もう本当に辞めたかった(笑)

その他に何かトラブルってありました?

山中

まず僕が調子悪くなったっていうのが、最初のトラブルですね(笑)CP1の段階でもう「これやばいな」って思ってました。反中さんと谷口さんのペースについていこうとすると心拍数が上がり過ぎちゃって「このペースではついていけないな」って。熱中症みたいな症状にもなっていて、羊蹄山は休憩を挟みながら何とか登ったという感じです。

ラフティングもすぐに漕げなくなってしまって、でも反中さんに「山中さん休まないでください」って言われて(笑)辛くて下を向いてたら「下向いちゃ駄目ですよ、上向かないと。下向いてるから辛いんですよ」って怒られました。なので力は入れないで漕いでるふりだけして(笑)結局ずっと反中さんから「山中さん。始まったばかりですよ!序盤の序ですよ」って励まされながらレースしていました。

他のアクシデントもだいたい僕ですね。僕の存在がアクシデントなんじゃないかって(笑)超人たちの中に一人普通の人が混ざってた感じですから。

ラフティング、めちゃくちゃ体調悪かったそうです

地域全体に応援されるイベントになってほしい

2022年のレースに向けて何か目標ありますか?

山中

今年はもう「全員かかってこいよ」みたいな感じで煽るだけ煽って、みんなにやられるっていうオチでいいんじゃないかなと思っていて(笑)

個人的にはやっぱり完全完走はしたいので、それができるレベルのメンバーで挑みたいとは思っています。だけどもし「絶対優勝したい」って人がいるなら、そういうチームでやってくださいって言うと思います。そこの信念は僕は共有できないので。

完全完走目指してアドベンチャーレースを満喫したいですね。楽しく過ごせればいいんじゃないかな。とにかく満喫することを優先で、去年の前半みたいな辛い思いはしたくない(笑)

でもスタート前は煽るんですね。

山中

もちろんもちろん。

優勝ビブを着て「お前らに負けるわけねえだろう」って、「いつでも上がってこい」っていう感じ煽って走りますよ(笑)CP1までは全力でダッシュして、トップチームになって煽れるだけ煽って。その辺からバンって突然失速しちゃうかもしれない。楽しみにしていてください(笑)

今年からNISEKO EXPEDITIONに改名しさらに飛躍を目指すこの大会ですが、期待していることは何かありますか?

山中

期待することはいっぱいありますけどね。まずはいろんな人に知ってもらって、エキスパート向け、ビギナー向けのクラス問わずにどんどん参加してもらいたいですし、この地域を盛り上げる大きな大会になってもらいたいと思ってます。

地元の人にも大会のいいところを知ってもらって、応援してもらえるような大会になれるといいんじゃないかなって思いますね。

例えばレース中の選手が地元の人たちに声をかけられる率とかって、まだまだ低いと思うんですよ。マラソン大会や有名なトレラン大会みたいに、沿道で「頑張って!」って応援されるような大会になってほしいですね。ニセコ全体、俱知安全体で応援されるイベントになってほしい、そのためのアイデアをゆっくりでも着実に実現できる大会運営を期待しています。

そんなことを言いながら今年も「気づいたら優勝」しているかもしれません

NISEKO EXPEDITION 2022 Official WEB

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