【記事】「今後一切働かない」アドベンチャーレースに全てを懸ける田中正人のルーツを聞いてみた! - 田中正人 & Sue インタビュー #1

TV番組クレイジージャーニーで、鬼軍曹としてお茶の間にその名を轟かせ、ジャンクSPORTS出演時には「今後働かない」宣言で出演者に大バッシングを受けたこともある田中正人。

鬼軍曹というあだ名の印象や、クレイジーなイメージが先行(?)してますが、実はレースで大事なのが「人間力」と語る正人さん。

アドベンチャーレースの世界に触れたキッカケから、リーダーとして今の考えに至った経緯、そしてチーム運営の裏話まで、Team EAST WINDリーダー田中正人さんと、プロデューサーSueさんのロングインタビューです!

〈 聞き手=まつもと(ゆるやま!)〉

人間性としてこのままじゃダメだなと思い知らされた

正人さんは元々理系で研究職をされてたとのことなんですが、そこからどうしてこの世界に入ることになったのか経緯をお伺いしてもいいですか?

田中正人

小学校入る前ぐらいから科学実験みたいな…フラスコで薬品混ぜて爆発するみたいなのが好きで、家の中の調味料とか母親の化粧品とか混ぜて遊んでるような子供でした(笑)

とにかく何でも混ぜてて…全然反応しなかったですけど。今思えば家庭にも塩素系の漂白剤とかあったはずなので、結構危険ですね(笑)

高校進学するときにはすぐにでも化学系の仕事に就きたいと思っていたので、専門知識が学べる高等専門学校に進学しました。そこで5年間勉強して、そのまま研究職で化学系の会社に入社しました。

その会社は有機合成化学を研究する会社で、他の会社では扱わないような劇物を取り扱うことが多く、かなり刺激的な職場でしたよ。軍隊が使うような防毒マスクして実験やってました。体調を崩して退職せざるを得ない人もいるような、過酷な環境ではありましたね。

山岳スポーツとしては、高等専門学校でオリエンテーリング同好会に入って、そこでオリエンテーリング始めたってのが一番最初のきっかけです。社会人になってからは多摩オリエンテーリングクラブっていうクラブに入ったんですが、そこが競技志向がバリバリ強くて。毎週末山を走って富士登山競走とか出たりっていう。そんな中で93年のときに第1回のハセツネ大会が行われました

そのハセツネ大会で優勝したことが当時スポーツ新聞記事に載って。そのとき世界ではアドベンチャーレースの元祖のレース「レイドゴロワーズ」っていうのが開催されてたんです。そのレースは日本人は誰も完走したことがなかったんですけど、その「ハセツネ優勝」という記事が日本人タレントチーム完走を企画していたプロデューサーの目に止まったんですよ。で、メンバーにっていうので声をかけてもらったってのがアドベンチャーレースの始まりです。

子供の頃のぶっ飛んだエピソードを楽しそうに話す正人さん

研究職もハセツネなどのトレラン大会も基本的には「ひとり」だと思います。アドベンチャーレースっていうとそこからチーム競技になると思うんですけど、チームになるというところで何か感じたことはありますか?

田中正人

僕はあのすごく…なんだろう…もともとチーム競技が大嫌いで(笑)

自己主張が強くて、人との協調性とか全くなくて「チーム競技だと自分の好きなようにできないじゃん!」って。それがかなり不満ではあったんだけど、ただ面白そうだったのでとりあえずやってみようってことでレイドゴロワーズに参加しました。

で、実際やってみたらその「チーム競技の難しさ」に直面することになり(笑)そのあたりは陽希との共著の中でも書いてるんですが、間寛平さんとのエピソードとか

今まで悠々自適に生きてきたんですけど、自分の苦手な人とのコミュニケーションを取るとか、相手の気持ちを気遣ってプロジェクト回していくとかは避けて、自分の得意なところだけで生きてきたんだなと。「これじゃダメだな」って強く思わされたのがアドベンチャーレースだったんですね。今まで天職のような仕事で楽しくやってたんだけど、人間性としてこのままじゃダメだなっていうのを思い知らされました。

たった1回のアドベンチャーレースの経験で、それでもう次の年に会社辞めてプロアドベンチャーレーサーって勝手に名乗って飛び出した感じです。

アドベンチャーレースのスタートはその悔しさを克服するためだったところもあると思います。僕は意外とネガティブな要因の方がパワーになるタイプなんで(笑)

プロチームとして活動するEAST WINDですが、正人さんにとってプロとアマチュアの線引きはどこなんですか?

田中正人

一般的にはそれだけで食べていける、お金も入ってくるっていうのがプロだと思うんですけど、僕の中ではその人の「人生の中で一番趣きを置いている」ってことだと思ってますね。それも圧倒的な比重で。

そもそも「レース関連で得られる収入」っていう定義も難しいんですけど、どちらにしろレース絡みで収入になったものって、結果的に次のレースの経費で使うので生活費には回ってないです。

生活費についてはカッパCLUBでラフティングのガイドをしたり、自分たちでレースイベントや講習会開いたり、ちょっとテレビ関係の方でランニングカメラマンの依頼があったりとか。そういうのでちょこちょこ収入を得てどうにかなっています。

カッパCLUBは,ラフティング,ハイドロスピード,キャニオニング,スノーシュー,バックカントリー,エアーボードなどを群馬県みなかみ町(旧水上町)で提供しています。

それは例の炎上した「一切働かない」には該当しないんですね(笑)

田中正人

そう!トレーニングが兼ねられることは「働く」に入れてない。ただ生活のため、生きるためにお金を稼がなきゃいけないって言って、お金稼ぎの為だけの行動するっていうのは一切やってないという意味です。

大会で得られる賞金って大きい大会だとトップで5~600万円くらい。でも大体賞金でるのは3位くらいまでで、それ以降は出ないって感じがほとんどですね。

渡航費だけで300万とかかかるので、上位だけがやっと採算取れるみたいな感じです。賞金出ないレースもあって、例えばパタゴニアン・エクスペディション・レースなんかは優勝賞金はないです。あんなにすごいのに(笑)

PER(パタゴニアン・エクスペディション・レース)は参加費も国内レース並みに安いそうですよ

アドベンチャーレースを通じて、今後こういうことをしていきたい、とかなにか展望はありますか?

田中正人

アドベンチャーレースは、自分にとって「常に学びがあって自分を成長させてもらえる場」

それにのめり込んで活動してきたんだけど、資金もない中で海外レースをやるには、大勢の方からの応援、支援を受けないとやっていけない。

でも例えばある企業にお金を出してもらっても、その企業に対する金銭的なスポンサーメリットなんて何もないんですね。一時期それですごい悩んだこともあったんですけど、じゃあ何ができるか?っていったら、自分が経験したことをアウトプット…一般社会にアウトプットしていくことだ、と。

大きく言っちゃえばそれで日本が少しでもね、良い社会になったり、皆が元気になってもらったりってなればいいなっていう感じでやってますね。

僕ね、アドベンチャーレースは正直日本人向きじゃないし、日本でそこまでブレイクすることはないかも?と思ってるんですよ。でもこれにハマってくれる日本人も一定数いるはずなんですね。

そういう人たちを発掘して目覚めさせて、それぞれ自分の職場とか地域とかでいい意味で「子供っぽい」ところを発揮してもらえたら日本中が面白くなるんじゃないかなっていう。

愚痴ばっか言ってるんじゃなくて、なんか自分で決断して何か失敗してもどうリカバリしようかとか、前向きに捉えて問題解決していくような。アドベンチャーレース自体がそういうことの繰り返しだと思うんで。

だからそういうのを楽しめる人っていうのは、一般社会に戻ったり家庭に戻ってもいろんなトラブルが楽しめる人になるんじゃないかなって思ってるんで、そういう人を増やしたいです。

アドベンチャーレースを要約するとしたら何ですか?

田中正人

僕個人でアドベンチャーレースが何かって要約するとしたら、「僕自身の人間性をすごく成長させてもらえる場」であるということですね。

アドベンチャーレースの大きなテーマのひとつが「チームワーク」なんですよね。僕はそこがもともと苦手だし、避けてきた世界なんだけど、でも一般社会では一番大事なことで。

人として生きていく上で、どんな人も否応なしにチームに所属してるわけですよ。意識して周りの環境良くしていくかどうかによって、やっぱ自分の人生が豊かさが雲泥の差になると思うんです。

アドベンチャーレースは極限の状態下でのチームワークがすぐにでも試されるし、本当の自分の奥底にある人間性が出てきてしまう。その世界で勝負をして自分の人間性を磨いていきたいし、自分のチームを良くしていきたいし、そこから得たものをみんなにも伝えていきたいなって思ってます。

その辺りの話にも通じると思うんですが、正人さんはEAST WINDの中でリーダーのポジションになると思います。その「リーダー」として、レースで一番求められる力ってどのあたりですか?

田中正人

そこがね、すごい難しくて。

僕がアドベンチャーレース始めたときはリーダーってのはとにかく1番強くて、1番経験があって、決断力もあって責任力もあって、それで方針を決めてみんなを引っ張ってくっていうのがリーダーだと思ってたんですね。

だけどどうもうまくいかない。それでチームが崩壊したこともあって、これは何かが駄目だと。強く引っ張るだけのリーダーシップっていうのはどうも駄目だというのに気づいて、今はみんなが活き活きと主体的に活動できるような、バックアップするようなそういうリーダーシップじゃないと駄目だっていうのに気づいて。

でもここしばらくその方向性でやってきたんですけど、最近になって反対に受身のメンバーにはそれが伝わらなかったり、「引っ張ってもらわないと困ります」みたいなこともあったりして(笑)

「自分はこのチームでやれることがあるんだ!」っていう主体性を持って関わってもらえるように、いろんなこと考えながらやってくのがリーダーなのかなと今は思ってます。

記事では紹介しきれなかった
インタビューの全容はこちらから!(第1回/全3回)

田中 正人

たなか まさと

Team EAST WIND

プロアドベンチャーレーサー

2017年、TBS系クレイジージャーニーに出演、アドベンチャーレースの認知とともに、「鬼軍曹」としてお茶の間を震撼(?)させた日本のAR界を牽引する田中正人。

疲労と苦痛の中レースを続けるチームメイトに「幻覚は楽しめ!」「失神したら痛いと認める」と檄を飛ばし、レース中嘔吐しそうになれば「(カロリーを無駄にするな)吐くな!飲み込め!」と発言するなど、過激な言動が注目されがちだが、チームメイトとの関わりを通じて「チームビルディングやリーダーのあるべき姿」を模索し続けており、アドベンチャーレースの魅力の一つが、「人との関わり、人間力」である、と断言する。

レース以外にもレース、大会の運営、講習会、講演会など幅広く活動している。

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